伝えるために(3)


アイ・メッセージで気持ちを伝えよう...!
いつからか、そう意識するようになりました。


けれど最初はなかなか、難しかったです。
それまでの私は「分かってほしい」という強い思いを、
夫への非難や要求に変えてぶつけるような、歪んだ表現をしがちでした。
まして不倫を知ってからは、どうしても、夫を責める気持ちが上乗せされてしまいます。


なので「私が...」「私は...」と言わなければならないところを、
「あなたは...」「あなたが...」と、相手の非を数え、
それに対して夫が逆ギレしたり、逃げる姿勢をとると
たちまち怒りが湧いてきて、コントロール不能になってしまいました。


アイ・メッセージどころか、
夫の態度のひとつひとつに過剰反応し、
心がぐるんぐるんに振り回されている状態だったのです。


でもそれでは、夫も聞いてはくれないし、
私も夫を責めるばかりで、嫌な後味ばかり味わうことになる...。


そこで私は、苦肉の策で 変化球を使いはじめました。


ある日話しながら「あっ、自分の気持ちを話していない!」と気づいたのです。
「あなたは...」「あなたが...」と、夫を主語に話していて、
自分でも気づかないうちに、夫を非難していたのです。
その気づきが胸をよぎったのは、一瞬でした。
そのまま終わりまで話しつづけ...最後に、「...と 思うんだ。」という言葉をくっつけたのです。
新鮮で 不思議な空気が流れました。


日本語の不思議!
「あなたは...」「あなたが...」と、相手を主語に話しはじめたのに、
「...と 思うんだ。」と結べば、どんでん返しのように、「私」が主語に変わるのです。



考えてみれば「私はこんな気持ち」と、自分のことを語るのは、
まるでドラマや映画の登場人物になったみたいで、慣れないうちは違和感が強い。
さかのぼれば子供の頃から そんな表現にはなじみがないのだ。照れくささもある。
急に上手くいかないのは当たり前だ。
徐々に言い回しを工夫していけばいいのではないか...?


「あなたは、私が尽くしているのも当たり前だと思って、
 平気で嘘ついて、私を騙してきた。
 今まで私がどんな辛い思いして、うつのあなたを支えてきたのか、
 全然分かっていなかったんだ...!って 思うんだ。

(↑最後のひと言を、つけたり、はずしたりして読むと ずいぶん印象が変わりませんか?)



この言葉をつけることで、私の意識も徐々に変わり始めました。
眉間に皺を寄せ、険しい目つきで聞いていた夫の顔が、
最後のひと言で ふっと力の抜けた表情になることもありました。


「...と 思うんだ。」というこの言葉は、私の心にも、少し丸みを持たせてくれたように感じます。


この言葉を使うことで 私自身も、
相手をなじり、非難し、責め立てたかったのではなく
自分の被害者感情や、無価値感を伝えたかったのだと、薄々気がつき始めました。


実際はこの言葉ですべてが上手くいくわけでもなく、
常に夫の逆上をふせげたわけでもないし、
私のもどかしさを すべて解消したわけでもありませんが、
この言葉が、私の中に微妙な変化を起こし、
その当時は見過ごしていたほどの、小さな気づきをもたらしてくれたのは確かです。


アイ・メッセージはとっかかりですが、
アイ・メッセージを意識することで産まれる気づきや、自発的な変化の方が、
アイ・メッセージをいきなりマスターすることよりも、重要なのかも知れません。


この言葉が、私の口から偶然出てきてくれたのは、何かの恵みですね...!
そこへ至るまでに、数え切れないくらいの修羅場があり、言い合いがあり、誤解がありました。
いわゆる失敗会話が 幾度となくありました。
だからこそ、実は必然的に この言い回しを思いついたのかも知れないけど
最初からもっと上手く伝えられる人はいるでしょうから、
私は不器用ゆえに、失敗の数も多く、そのぶん引き出しも増えたということかも知れません。


それから少しずつ、私はこの「...と 思うんだ。」という言葉を改良していきました。


「...と 思ってしまうんだ。」
「...と 思っちゃうんだ。」
「...って感じがするんだよね。」
「...みたいな気持ちになっちゃう。」


ほとんど無意識の作業ですが、人間の脳とは不思議なもので、
知らない間に学習し、試し、自分の感覚を通してフィードバックし、
少しずつ、じりじりと 目指す方向へ動きはじめていたように思います。
(3歩進んで2歩さがる...の世界ですが。)


そうこうするうち、色んな言い回しだけでなく

・注意深く言葉を選ぶような、ゆっくりした話し方
・自分に向かって話をしているような声色



などの変化が、加えられていきました。
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by marca-mia | 2006-04-27 03:09 | 伝えるために・聞くために


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